そんな中、今年度の四月に中国政府から「中国黒竜江省及び大興安嶺全域における天然林伐採を全面禁止する」という通達がありました。この措置は将来的に吉林省、内モンゴルを含む東北全域に波及すると考えられており、目の詰んだ柔らかい木味の中国産タモ・ナラ材を手に入れることは遠からず不可能となるでしょう。
そうであるならば今後はロシア材に依存せねばなるまい、業界ぜんたいがそんな頭でいたところ、今度はロシア政府から通達がありました。
曰く、ロシア国内のタモおよびナラの違法伐採が合法伐採に匹敵する量に及んでいる状況を鑑みて、ワシントン条約事務局に申請を出した、とのことです。
これを受けてロシアのタモ・ナラ材は今後、ワシントン条約付属書Ⅲの管理下となります。輸出入する場合には輸出国であるロシア政府が発行する許可書が必要となりますので、違法伐採材を購入していた業者達も合法材を購入するほかなくなります。材の取り合いは激化の様相、単価もきっと更なる上昇へと向かうでしょう。
ここまで違法伐採材が問題となった背景には、中国の巨大な木材需要があります。2013年度、日本がロシアから輸入した広葉樹丸太は1万3000立方、対して中国は26万4000立方と桁がひとつ違います。この膨大な需要を満たすため、少なからずのロシア産違法伐採材が中国へと大陸を跨いで流入していたのです。
また、先述した中国の伐採禁止措置によって130万立方の材が削減される見通しで、この空白をどのようにして中国が埋めるのか、というのはひとつ今後の世界の広葉樹需給を占う上で、重要な焦点となるでしょう。
ナラの代わりにホワイトオークを、という流れと同様に、タモをヨーロッパ/アメリカ産アッシュへと切り替える動きが予想されます。